25年間の「遠回り」が教えてくれたこと
3月も半ば。いよいよ4月からの新生活に向けて、引っ越しの荷造りや新しいスーツの準備に追われている頃だろうか。
前回は、お金に働いてもらう「投資」と、一か八かの「投機」の違いについて話した。だが、新社会人となる君たちに、私がどうしても伝えておかなければならないことがある。
それは、20代において最も「利回り」が高いのは、株式でも債券でもなく、君たち自身への投資であるということだ。
私は獣医師として25年以上、臨床の現場に立ってきた 。その間、20代から40代の前半にかけては、これでもかというほど自分自身に投資をしてきた自負がある 。40歳で博士号を取得したのも、その一環だ 。
今回は、なぜ「自己投資」が資産形成の最強のアクセルになるのか。私の足跡を振り返りながら、その本質を語ってみよう。

1. 自己投資は「入金力」というエンジンの排気量を上げる
資産形成の方程式は、極めてシンプルだ。
$$資産 = (収入 – 支出) \times 運用利回り$$
多くの人が「運用利回り」を1%上げることに躍起になるが、新社会人の君たちが真っ先に注力すべきは「収入」を上げること。つまり、資産運用の「種銭」を作るための「稼ぐ力」を最大化することだ。
例えば、100万円を年利5%で運用しても、手元に残るのは年間5万円(税引前)。だが、自己投資によって自分の希少性を高め、年収を50万円上げることができれば、それは運用利回り50%に匹敵するインパクトを持つ。
私自身、臨床スキルを磨くだけでなく、経営や異業種のプロデュース、さらにはワーケーション施設の開発など、多角的に事業を広げてきた 。この「掛け算のキャリア」を支えたのは、間違いなく若い頃からの自己投資によって培った知識と経験の厚みだ。
2. 「体験」というインプットが未来の価値を作る
自己投資と聞くと、資格取得や英会話を思い浮かべるかもしれない。もちろんそれも大切だが、私がより重視してほしいのは**「良質な体験」への投資**だ。
私は食べることや、鉄道・航空機といった乗り物全般、そしてサーフィンなど、多様な趣味を持っている 。
美食を知る: 全国を知り尽くす美食の旅は、単なる贅沢ではない。最高峰のサービスや味の構成を知ることは、ビジネスにおける「感性」を磨くことに直結する 。
旅で地勢を学ぶ: 自分の足で歩き、現地の空気を感じることで、ニュースでは得られない地勢的、歴史的な知識が身につく 。
趣味を深掘りする: 趣味を通じて出会う人々や、その世界特有の論理(Gのかかり方や構造の美しさなど)に触れることは、思考の幅を驚くほど広げてくれる 。
これらはすべて、後年になって「事業開発」や「プロデュース」という形で大きなリターンとなって私に返ってきた 。

3. 脳梗塞が教えてくれた、自己投資の「賞味期限」
「投資は早く始めるべき」とお金の話でよく言われるが、自己投資も同じだ。いや、自己投資にはさらに残酷な「賞味期限」がある。
2018年に脳梗塞を患い、死というものに向き合ったとき、私は痛感した 。 「もっと勉強しておけばよかった」ではなく、**「あの時、あの場所へ行って、あの体験をしておいて本当に良かった」**という感謝の気持ちが湧いてきたのだ。
体力があり、感性が鋭い20代の今、手に入れた知識や体験は、その後の数十年間にわたって君たちの血肉となり、利益を生み出し続けてくれる。
20代で学んだことは、40年かけて回収できる。
50代で学んだことは、回収期間が短い。
この時間のレバレッジを、どうか無駄にしないでほしい。
結びに代えて
新社会人として最初の一歩を踏み出す君たちへ。
給料のすべてを貯金や投資信託に回す必要はない。もちろん将来への備えは大切だが、その数万円を「今の自分」をアップデートするために使ってみてはどうだろうか。
専門書を買う、憧れのホテルに泊まってみる、一流の料理を食べてみる。その時感じた「感動」や「悔しさ」こそが、君たちの稼ぐ力を爆発させる最強の燃料になるはずだ。
「自分という資本」の利回りを最大化せよ。
次回のウシログでは、自己投資を具体的な「稼ぐ力」に変えるための、**「多角的なキャリアの構築法」**について、私の失敗談も交えながら話してみようか。
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