楽天グループの株主優待と投資価値

楽天グループの株主優待と投資価値 – ウシログ
2025/12/13 ■金融 ■ガジェット ■ライフスタイル

楽天グループという企業をご存知だろうか? いや、愚問であった。日本に住んでいて楽天経済圏の恩恵、あるいはその圧倒的なポイント還元システムを知らない人はいないだろう。

しかし、その「株」となるとどうだろうか。 モバイル事業の巨額赤字、社債の償還問題など、ここ数年経済ニュースではネガティブな話題の常連であった。私自身、投資に対する姿勢として「安全なスタイルを確立できれば良い」と考えており、本来であればハイリスクな銘柄は避けるのが定石だ。

だが、今回あえて楽天グループ(4755)を取り上げるには理由がある。それは、「株主優待」がもたらす実質利回りが、バグと言っていいレベルで異常事態になっているからだ。

今回は、経営者としての視点と、一人のガジェット好きとしての視点から、この「楽天株」という名のインフラ投資について記述したい。

モバイル事業という「巨象」と今後の展望

まず、誰もが懸念する今後の展望、つまりモバイル事業について触れておかねばならない。 長らくグループの利益を食いつぶしてきたこの事業だが、2025年に入り潮目が変わった。

直近の2025年度第3四半期決算において、ついにグループ全体で6年ぶりの営業黒字を達成している。モバイル単体でもEBITDA(償却前営業利益)は黒字化し、契約回線数は950万回線を突破した。 かつては「繋がらない」と揶揄された通信品質も、プラチナバンドの獲得と基地局整備により、実用レベルに達していると言っていい。

一度インフラが整ってしまえば、通信事業というのは極めて強力なキャッシュカウ(金のなる木)になり得る。携帯電話料金というのは、現代における「税金」のようなもので、誰もが払い続ける固定費だからだ。損益分岐点を超え始めた今の楽天は、もはや沈みゆく船ではない。

驚異の株主優待:通信費のタダ取り

さて、ここからが本題である。私がこの株に注目した最大の理由は、株主優待の圧倒的な「実利」にある。

現在の優待内容は、「楽天モバイルの音声+データ30GB/月」プラン(1年間無料)である。

このインパクトを数字で分解してみよう。

  • 優待内容: 音声+データ30GB/月(1年間、eSIMにて提供)
  • 対象: 12月末時点で100株保有の株主全員

通常、楽天モバイルでデータ30GBを使用する場合、月額料金は3,278円(税込)かかる。これが12ヶ月分提供されるわけだから、単純計算で以下の価値がある。

3,278円 × 12ヶ月 = 39,336円

記事執筆時点(2025年12月)での楽天グループの株価は930円前後を推移している。100株購入するのに必要な資金は約93,000円だ。 ここで、配当金を無視したとしても、優待だけで得られる「優待利回り」を計算してみる。

(39,336円 ÷ 93,000円) × 100 ≒ 42.3%

利回り42.3%。 正気だろうか? 通常の高配当株でも4〜5%あれば御の字という世界で、この数字は明らかに異常だ。仮に株価が半分になったとしても、2〜3年保有し続ければ通信費の削減分だけで元が取れてしまう計算になる。

配当金について

現状、楽天グループは財務体質の改善を優先しているため、配当金は「無配(0円)」である。 インカムゲイン(配当収入)を重視する私の投資スタイルからすれば、本来は対象外だ。

しかし、この優待を「現物支給の配当」と捉えれば話は別だ。 私は仕事柄、移動中や出張先での通信量が非常に多い。メインの回線とは別に、テザリング用やiPad用のサブ回線としてこの30GBがあれば、確実に月々の通信費(固定費)を削減できる。

「出ていくお金を減らす」ことは、税金のかからない利益を得るのと同義である。むしろ、配当金には約20%の税金がかかるが、通信費の削減効果(節約)には税金がかからない。実質的な手取り効果としては、額面以上の価値があるとも言える。

私の「楽天株」活用術

私は以下のような運用を実践している。

  1. デュアルSIM運用: iPhoneのメイン回線(物理SIM)は、繋がりやすさとエリアを重視してドコモやau系にしておく。
  2. サブ回線(eSIM): 楽天の株主優待SIMを設定する。

こうすることで、通話や重要な連絡はメイン回線で確保しつつ、動画視聴やテザリングなどの「ギガ消費」はすべて楽天の30GBで賄うことができる。Rakuten Link Officeアプリを使えば国内通話も無料だ。

これは、単なる投資というよりは、「約9万円の初期投資で、1年間の通信インフラ権利を買い切る」という、一種のサブスクリプションに近い感覚かもしれない。

まとめ

楽天グループへの投資は、企業としての成長性に賭ける側面(キャピタルゲイン狙い)ももちろんあるが、現状では「生活防衛のためのツール」として非常に優秀である。

  • リスク: 株価の下落、優待の廃止(改悪)
  • リターン: 年間約4万円相当の通信費削減 + 黒字化による株価上昇の期待

もし、あなたが毎月のスマホ代に頭を悩ませているなら、あるいは私のようにガジェットを複数持ち歩く人間ならば、楽天株はポートフォリオの片隅に入れておくべき「飛び道具」だろう。

歴史を振り返れば、金融というのは傾向と対策が意外とシンプルである。 「固定費を下げるために、資産を買う」。これはインフレ時代における、一つの正しい防衛策なのかもしれない。


この記事を書いた人

牛草貴博 獣医師・博士(獣医学) 獣医師として臨床25年、博士号を取得。動物病院経営のほか、多角的な事業開発に携わる。食べることと鉄道を中心とした乗り物全般が趣味。もともと不動産が得意分野だったが、近年は金融全般も勉強中。いずれは自然に囲まれた中での3拠点生活を目標にしている。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

牛草貴博のアバター 牛草貴博 獣医師・博士(獣医学)

獣医師として臨床25年、40歳で博士号を取得しました。動物病院は横浜市中区、宮崎県宮崎市の二つの病院を経営しています。その間現在のイオンペット、動物再生医療技術研究組合、動物病院向けの12薬局、オーダーメイド腸内フローラフードの事業開発に携わってきました。また異業種の飲食のプロデュースをはじめとして現在はアタッシュドプレスルーム事業、ワーケーション施設の事業開発を行っています。食べることと鉄道を中心とした乗り物全般が趣味で最近はサーフィンやボディーボードなどを大学生以来再開しました。
もともと不動産が得意分野でしたが、株式、債券を中心とした金融全般も現在勉強中でいずれは自然に囲まれた中での3拠点生活を目標にしています。

目次
閉じる